A Confession of a ROCK DRUMMER

KenKenという太鼓叩きの独り言。

【好きなアルバムについて語る番外編】2020年聴いた新譜一覧(今更感)

 

もう2月になったと言うのに今更感しか無いが。

更に結論から言うと、元々新譜のチェックというのにそこまで熱心ではないので、枚数自体は非常に少ない。ブログなんぞに書くのが恥ずかしいレベルなんだけど、まぁ備忘録という事で。

 

 

King Gnu - CEREMONY

 

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1月15日リリース。

昨年シングル「白日」が大ヒットした事で一気に国民的バンドへとのし上がったKing Gnu。本作はフルアルバムとしては3枚目、前作からちょうど1年ぶりのリリースとなった。

随分リリーススパンが短いなぁと思って調べてみたら、レーベルがSony傘下?らしい。なるほど納得。矢継ぎ早なリリース戦略はSonyの得意技でもある。まぁ、それにバンドの創作ペースが追いつかないと破綻するというリスクも当然あるけど。

「ミクスチャーロック」という売り文句で宣伝されてるみたいだけど、今やミクスチャーロック=ラップメタルっていう昔の公式はもはや成立しないようである。個人的には良いことだと思う。だってミクスチャーって、普通のロックサウンドでラップしてるだけやん。冷静に意味分からないもんな、ミクスチャーって言う割にミックスされてる要素超少ないし。…話が逸れた。

オルタナティヴロックを基本としつつ、様々な音楽的要素がとにかくごった煮され、力技で纏め上げたような1枚。確かに少々無理矢理感ありつつも、概ねスタイリッシュで聴きやすい仕上がりではあるのだけれど、とにかく情報量が多く、絶妙に際どいバランスで成り立っている為、油断していると巧妙に隠された毒針に突然刺されるような、独特の危うさを孕んでいる。

大ヒットシングル「白日」を収録しているが、それ以外の楽曲もよく練られた個性的なものばかりで、ぶっちゃけ「白日」無くても全然アルバムとして成立してしまう。逆にこのモンスターシングルをよくアルバムに入れられたね、しかもこんなメンツで、と感心してしまう。この辺りは曲の出来た時系列が分からないので何とも言えないけれど。

 

 

 

 

Nova Twins - Who Are The Girls?

 

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2月28日リリース。UKの女性ロックデュオNova Twinsの1stフルアルバム。後述するBring Me The Horizonの『Post Human : Survival Horror』への参加でも注目された2人組。

彼女達、結成自体は2014年とそこそこのキャリアなのだが、今までのリリースはシングル・EPばかりで、フルアルバムは初めてだそうで。サブスク時代においてはやはり作るにも聴くにも時間のかかるフルアルバムって敬遠されがちなのかなぁ。

ヘヴィかつノイジーなギターサウンドに、ヤケクソな女性2人のシャウトが飛び交う、非常にパンキッシュな1枚。耳に残るメロディとかそう言うのは無いけど、日常に溜まった鬱憤を音で吹き飛ばすには一番。ある意味プリミティヴなパンクの姿とも言えるかもしれない。

正直こういう音を出すガールズバンドは昔から一定数は存在していたけれど、こういうギャルな見た目のは意外といなかったかもな、なんて。アー写だけ見たらヒップホップっぽいもんね。あと全体通して、この手のバンドが持ちがちなフェミニズム的匂いが全然しないのが逆に新鮮。そもそもそんな土俵で戦う気ありませんけど、てかパンクすんのに性別拘る必要ある?って事なのか。

 

 

Noel Gallagher's High Flying Birds - Blue Moon Rising EP

 

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3月6日リリース。2017年の3rdアルバム『Who Built The Moon?』以降はシングル・EPを短いスパンでリリースしていく活動スタイルに移行している感ある我らがノエル兄貴。これも去年出した『Black Star Dancing EP』『This Is The Place EP』と似たような、前述の『Who Built The Moon?』以降の路線を踏襲・正常進化したような作品。ぶっちゃけあまり変わり映えはしないので特段何か付け加える事も無いのだが、あのノエル兄貴もサブスク時代に合わせてリリーススタイルを変えてきたなぁという感じ。今後フルアルバム作る気あるのかなぁ?

 

 

 

Pearl Jam - Gigaton

 

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3月27日リリース。この辺りから新型コロナウイルスの影響が日本でもいよいよヤバくなってきた頃だったな。

Pearl Jamの実に7年振りのニューアルバムという事で。ここ2〜3年ずっと「アルバム出します詐欺」を続けてきた彼等だけれど、ようやくリリース。大変長らくお待ちしました。

先行シングル「Dance Of The Clairvoyants」がモロTalking Headsな曲調で、ここに来て新規軸か?と思いきや、フタを開ければ安定のPearl Jamらしさ全開の骨太なロック。前々作『Backspacer』(2009)と前作『Lightning Bolt』(2013)でも見せた、より肩の力の抜けた曲作りや演奏・歌唱で、その時その時感じた事をストレートに吐き出すというスタイルは変わらず。新鮮味とかは正直無いが、「これで良いのだ」と心から思える、安心の作品。ちなみに2020年にはこの後アルバムとは別でシングル「Get It Back」をリリースしたり、エディ・ヴェダーもソロで『Matter Of Time EP』を出している。今後もマイペースに続けてくれれば、それで良い。自分にとってPearl Jamはそういうバンドである。

 

 

 

Enter Shikari - Nothing Is True & Everything Is Possible

 

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4月17日リリース。詳しくは以前書いたブログをご覧頂きたいのだけれど↓

【好きなアルバムについて語る】Enter Shikari - Nothing is True & Everything is Possible - A Confession of a ROCK DRUMMER

内容自体はシカリにとって原点回帰的な作品である。

この頃になるとコロナの勢いがもうどうしようも無くて、世界中で大型イベントはバタバタ中止、ヨーロッパ諸国の殆どがロックダウン、日本でも緊急事態宣言が出されて、もうとにかくヤバい時期だった。2021年1月現在も状況はそこまで好転しておらず、Enter Shikariも未だ本作リリース後のツアーなどは出来ていない。ロックダウン中の自宅でのリモートライブもあれはあれで新鮮で面白いけど、やっぱ雰囲気出ないんだよなぁ。今思えばスケジュール通りのリリースが出来ただけでも奇跡だったのか。…また話が逸れた。

原点回帰的作品と言ったものの、構成要素は4th『The Mindsweep』(2015)、5th『The Spark』(2017)で培われたものが殆どで、それ以前の初期シカリっぽいB級スクリーモ的ノリは一切出てこない。ただあの当時の「なんかよく分かんないけどスゴい音楽作ったろ」的な未整理な初期衝動は再び感じる事が出来る。ただ未整理なものをただ陳列するのではなく、インタールード的楽曲を添えたりなどしてシームレスに繋げ、1枚のアルバムに纏める手腕は過去の経験からこそ。最近シカリ丸くなってない?って正直思ってたけど、このアルバム聴けば分かるが全然丸くなっていない。今後が楽しみな1枚。とりあえずライブで観たい。コロナ収束後の来日公演激しく希望。

 

 

 

 

The 1975 - Notes On A Conditional Form

 

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5/22リリース。前作『A Brief Inquiry Into Online Relationships』(2018)から約1年半弱という、彼等にしては驚異的に短いスパンで届けられた。もっとも、当初は2019年上半期のリリースを予定していたものが遅れに遅れた結果の2020年5月ではあるが。正直パンデミックの影響で下手したら一生出ないんじゃないか?なんて最初は疑ったくらいだったので、逆に5月にちゃんと出てビックリしたな当時は。

相変わらず長いアルバムタイトルだけど、前作・前々作と比べるとむしろ短いと錯覚してしまう。まぁ長さよりもその意味の取っ付きづらさの方が注目すべきなんだけど。

22曲、81分。白状するとまだちゃんと聴けてない。長いだけじゃなく情報量がとにかく多いのだ。1stのような80年代風アーバンポップスあり、2ndのようなアンビエントあり、3rdのようなEDMあり、アコギ弾き語り、オーガニックなギターによるパワーポップあり、ついにはオールドスクールハードコアまで飛び出すなど、常にカラーがアルバム通して目まぐるしく変化し、一瞬たりとて同じ瞬間が無い。この音楽的統合失調症は前作でも片鱗は覗かせてはいたが、今作でより進行しており、明確な到達地点は最後まで示されぬままアルバムは終わっている。前作もそうだったが、ちょっと理解するには時間の掛かるアルバムだ。いつかちゃんとレビューを書いてみたい1枚ではある。

 

 

 

 

 

SiM - THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES

 

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6月17日リリース。

前作『THE BEAUTIFUL PEOPLE』(2015)以降はシングル中心のリリースだったので、フルアルバムは実に5年振り。日本のメジャーにしては珍しい。

「とにかく好きな事だけやる」というテーマで作られたアルバムであり、より洗練された印象だった前作と比較しても、全体的によりアグレッシヴになった音が目立つ一方、「FATHERS」のようなストレートに愛を歌うラガバラードなど、従来無かったスタイルの楽曲も多く登場。正直ハマってるかどうかと言われると、ってのは無くはないが、「俺が歌いたいから歌っとるんじゃ、黙っとれ」という良い意味で振り切った印象を与える。

レゲエとパンク・ハードコアとの融合のさせ方はここまで来ると熟練のレベルで、その巧みさと幅広さは正直Skindredなどの先輩バンドを超えつつあり、「レゲエパンク」を超えた「SiM」というジャンルと化すまであと少しである。個人的には正直前作の方が好きだったかなぁとは感じたりもするが、これからが楽しみになった1枚。

 

 

Neck Deep - All Distortions Are Intentional

 

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7月24日リリース。UKポップパンク代表株Neck Deepの4枚目のスタジオアルバム。

前作『The Peace And The Panic』(2017)から約3年振りの新譜。これまで1〜2年のスパンでアルバムを出してきたので、過去最長のインターバルを経てのリリースとなった(と言っても3年でも十分短いんだけど)

というのも、前作のツアーが落ち着いた辺りで、彼等は既に次回作の制作にはより時間をかける事を公言しており、バンドの音楽性の拡張や、新たなトピックでの作詞…即ち「従来型Neck Deepスタイルからの脱却」をテーマとして掲げたい旨を語っていた為、間隔が伸びたのはある意味有言実行の結果である。

そしてその言葉通り、今までのアメコミ風タッチから一転したシンプルなジャケット、従来のポップパンク色を大幅に減退させ、パワーポップ風味なミドルテンポの楽曲の比率が増え、社会風刺的コンセプトを基にした歌詞の採用など、Neck Deepらしさは残しつつ従来とは違う新たな方向性を志向している。人によっては凡庸なロックアルバムに聴こえてしまうかもしれないが、ポップパンクバンドが脱ポップパンク化しようとすると大体一度はこういう道を通るものなので(Fall Out Boyとかもそうだったし)、今作はNeck Deepというバンドの過渡期を刻んだ1枚と言えるかもしれない。

「実はすごい意欲作」な1枚なので、これから時間をかけてゆっくり評価したい。

 

 

 

 

 

Nothing But Thieves - Moral Panic

 

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10月23日リリース。Nothing But Thievesの3枚目のスタジオアルバム。

フルアルバムとしては前作『Broken Machine』(2017)から3年振りになるのだけれど、その間にEP『What Did You Think When You Made Me This Way?』を2018年に出しているので、新作リリースとしては約2年振りという事になる。

本作の内容もそのEPで見せた方向性をそのままフルアルバムにまでスケールアップしたようなものになっている。楽曲のスケール感もより大きくなり、サウンド面でもよりダークかつ重厚なラウドネス・アグレッションを志向したものとなっており、「脱インディーロック化」は更に進んでいる。更にコナー(Vo.)の歌唱力・表現力もより進化・深化を見せ、前作・前々作以上に様々な表情を見せてくれる。こういう類の緊張感や不気味さというのはやっぱりイギリス人の方が出すの上手いよなぁ。

作品を出す毎にどんどん鋭く、生々しくなっていく様には本当に脱帽。来日決まり次第絶対に観に行きたいバンドの1つ。

 

 

 

 

Bring Me The Horizon - POST HUMAN : SURVIVAL HORROR

 

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10/30リリース。Bring Me The Horizonの連作プロジェクト「POST HUMAN」シリーズの第1作。今作、バンド側は一応EPとして扱っているが、9曲32分という内容なら今の時代普通にフルアルバム扱いしても良いと思うけどなぁ。まぁ30分前後の長さでアルバムとしたくないっていう思いが実はあるのかも。意外とその辺はオールドスクールなのかな。知らんけど。

アルバムを出す毎にアグレッションから少しずつ離れていっている感あるBMTHだったけど、今回はめちゃくちゃ重いしめちゃくちゃ激しい。電子音もより攻撃的になり、これまでのBMTHの持つパラメーターが全部振り切れている。「Dear Diary」なんかデスコア回帰?なんて思ったくらいだし。もっとも、オリバーの進化した歌唱力と復活した往年のスクリームをしっかり中心に据えて最大限生かした上での激しさ、というものなので、ヘヴィ・アグレッシヴ一辺倒に終わらず、非常に高い整合性の元に成り立っている。ゲスト参加したYUNGBLUD、Nova Twins、Amy Lee (Evanescence)、更にBABYMETALも、それぞれの持ち味をBMTHに対して全力でぶつけており、そう言った化学反応を楽しむ事もまた一興。

結果的に32分で纏まってくれて良かった、それくらい熱量の高いサウンド。多分あと1曲多いと一気に胃もたれすると思うので、そのギリギリのボリューム。

この「POST HUMAN」プロジェクト、聞くところによるとあと3作続くらしく、しかもそれぞれでカラーが違う内容になるとか。これまでも「カテゴライズ」という概念と闘ってきた彼等だけに、今作もその既成概念に対抗する新たな武器としたいのだろう。

 

 

 

 

Prep - Prep

 

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10月30日リリース。前述のBMTHと同日。

UKのアーバンポップバンドPrepの1stフルアルバム。元々バンド自体は知ってたんだけど、1stアルバムのリリースはある日フラッと立ち寄ったタワレコで知った。意外と日本でもそこそこ知名度はあるらしく、日本公演も既に2回くらいやってるとか。全然知らんかった。

バンド自体は2015年頃から活動しているようで、「EDMやエレポップの部品を使ってAORを作ってみた」というような楽曲を多く出している。この1stも基本的にはその志向だが、エレポップ色は大分薄まってて、結果昔懐かしいAORそのままな仕上がりに。ただ曲がどれもとにかく親しみやすいし、アレンジもまたAOR好きのツボを的確に突いてくるので、もう何も考えずにただただ曲に身を任せて楽しめる。目を三角にして「焼き直しだ!」とか言おうと思えば言えるけど、曲がバツグンに良いとそんなのどうでも良くなるね、という1枚。疲れた日とか気付いたらこれ聴いてたな。

ちなみにさっきのタワレコの話に戻るけど、その時のポップの書き方が「UK発シティポップ!」ってなってて笑ってしまった。いや音的にゃ間違っちゃいないけどさ、外タレでもシティポップって呼んで良いの?

 

 

 

 

Smashing Pumpkins - Cyr

 

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11月27日リリース。今や90年代グランジオルタナ勢の数少ない生き残りとなってしまった感あるスマパン。10枚目のアルバムって事で良いのかな?ていうかMachina ⅡとTeargarden by Kaleidyscopeはアルバムとしてカウントするの?

2018年のリユニオン以降2作目。20曲72分というなかなかのボリューム。前作『Shiny And Oh So Bright vol.1 / EP : NO PAST. NO FUTURE. NO SUN』(2018)から約2年振りで、ここで「vol.1」って言ってるから次はvol.2かと思ったら全然関係無さそうなタイトルでちょっと拍子抜けした。タイトルに書いてないだけで一応続いてはいるらしいけど、最初は「やれやれビリーくん、相変わらず三日坊主だなぁ」とか思ってしまった。

前作はMellon Collie〜期の、所謂スマパンらしさのド真ん中を突いたようなサウンドだったけど、本作はThe CureとかJoy Division辺りからの影響の色濃い。特にシンセサイザーの使い方がモロそんな感じ。だがビリー曰く「いつも通り思い付いたフレーズをギターじゃなくてシンセでやってみたらこっちの方が良かった」という事らしい。確かによく聴いてみると別にギターで弾いてもいつも通りのスマパン風ロックになりそうではある。

ひと言で言うと、「The Cureが『Adore』(1998)を再構築したような感じ」な本作だが、この空気感、人によっては多分古臭く感じるかも。ビリーのメロディラインの癖とメランコリックな雰囲気はしっかりスマパンのそれではあるけど、何で今更これ?って感じで。

このアルバムも曲数が多いのと長いのでちゃんと聴き込めてはいないんだけど、てかえっ、このアルバムSumerian Recordsから出てんの?Sumerianってあのスメリアン?あらまぁ何でまた。謎。

 

 

 

 

 

 

YUNGBLUD - Weird!

 

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12月4日リリース。イギリス出身のシンガーソングライターYUNGBLUDの2作目のフルアルバム。

前作『21st Century Liability』(2018)から2年振り。同作のレビューでも書いたが、まぁ何かと目に付く奇抜な立ち振舞いから「なんかまたキワモノっぽいのが出てきたなぁ」とか「一発屋で終わりそうだなぁ」とか、正直第一印象は全然良くなかったんだけど、いざ聴いてみると結構しっかり手の込んだ音楽を作ってらっしゃるお方である、この子。

1stアルバムでは基本打ち込みを中心としたサウンドで、いかにもPro Toolsだけで作りました感が強かった。レゲエをベースにしたエレクトロなリズムトラックは、強烈な密室感とアングラ臭を放っていたんだけれど、今回のアルバムでは一転してバンドサウンドを中心に制作。今まで打ち込みに頼っていた部分もちゃんと楽器使って演奏する事で、それだけで楽曲のレンジが一気に広がっている。またメロディや歌詞は前作より確信に満ちており、現代版ロンドンパンクのようなサウンドに乗っかって、その立ち振舞いはよりデンジャラスさを増している。そしてこんなにキワモノじみた姿をしているのに、何故か「自分の中にも実はこんな奴いたりして…」という奇妙なシンパシーを若者達に与えている。大袈裟な言い方をすれば、時代の歪みが生み出したモンスター、それこそがドミニク・ハリソンという男が「YUNGBLUD」という偶像に投影しているものなのかもしれない、なんてね。

 

 

 

 

 

Paul McCartney - McCartney Ⅲ

 

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12月18日リリース。ポール・マッカートニー大先生の…えっと、あれ、何枚目?あ、18枚目?のアルバム。思ったより少なかった、勝手にもう30枚くらい出してるもんかと勘違いしてた。

「ロックダウンで暇だから宅録でアルバム作った」なんてのはもはや珍しくも何ともなくなったけど、それを78歳のおじいちゃん、しかも元ビートルズがやったとなると話は別である。しかも「みんな家にいろよ!家でもロックは出来るからね!まさに"ROCKDOWN"じゃ!」とか言っちゃって、完全楽しんでんじゃんこの人。

ツアーもフェスもメディア対応も無くなった事を絶好の機会と捉えたポール、自宅スタジオに籠ってひたすら思いつくままに曲を作ってはレコーディングし、気付いたら曲数が溜まってきたのでじゃあアルバムにしよう、タイトルは…まぁ今回また全部自分でやったし、「McCartney Ⅲ」でいいか、という具合。従ってごく一部を除きほぼ全てのパートがポールによる演奏。その発想も行動力も全て、78歳のおじいちゃんが普通やるような事じゃない。ホントに若いなぁポール…なんて感心してしまった。おまけに31年振りの全英1位獲得という素晴らしいおまけ付き。

内容自体は所謂「マッカートニーシリーズ」の流れを踏襲したもので、宅録故の密室感とオーガニックさを重視した、良い意味で飾り気のないもの。ソングライティング面でも脱力感と自由さが目立つ。まぁ純粋に歴代ポール作品と比べるとぶっちゃけ他にも良い曲はあるかもだけど、このタイミングでこういう世の中になってしまったからこそ聴けた音楽ではある。

ちなみにこのアルバム、Apple Musicで表示すると、ジャケットのサイコロがクルクル回っている。初めてサブスクならではのお得感を感じた。

 

 

 

 

…2021年も既に楽しみな新譜が多い。とりあえずFoo Fightersの新作がもうすぐ出るから、今はまずそれを楽しみにしたい。