2019年を振り返る 〜今年聴いたアルバム編〜
ついさっき、
2019年を振り返る 〜バンド編〜 - A Confession of a ROCK DRUMMER
を書いたばかりだけど。
こっちでは【今年聴いた新譜を振り返る】という、言わば完全に自己満足な記事を書いてみようかと。
というのもコレ、結構前から温めていたのがようやく纏まったから、年明けギリギリに上げちゃえ、と。
どこまで行っても根本はただの音楽好きなリスナーなんです、ワタシ。
…多分後で恥ずかしくなって消すやつやんこれ。
まぁ、興味ある方はお付き合い下さい。
Bring Me The Horizon - amo
2019年1月25日リリース。英国シェフィールド出身の5人組Bring Me The Horizonの6作目。
今年聴いた一番最初の新譜。2019年ロックシーンの台風の目になったんじゃないか、という1枚。
前作『That's The Spirit』(2015)で最新型スタジアム・ロックバンドへと成長したBMTH。「でも次はどうするのかな?」と注目してた中でのリリース。
トラップへの接近や、アンビエント的エレクトロサウンドの強化などはしてるけど、あくまで前作で築き上げた路線をベースにしてるって感じ。
特筆すべきはOliver Sykes (Vo.)の歌唱力が飛躍的成長を遂げた事。来日公演観に行った時も思ったけどめっちゃ歌上手くなっとる。彼の歌唱力向上も本作を補強する大きなファクターであるのは間違いない。
きっと彼等の今後のキャリアにおいて、ある種「過渡期」的立ち位置にいるアルバムなんだろうな、と。次回作、また更に次のアルバム…とリリースされた後に今作を聴くと、また違った聴こえ方がしそう。
そういう意味でも楽しめる1枚。
このバンドのディスコグラフィを改めて1枚目から追ってみると、結構面白い。
アルバム毎に路線は変えつつも、全てが地続きと言うか、ちゃんと1本の線で繋がってる。
バンドとして正しい段取りを踏まえた上での今なんだなと。もしかしたら1枚目を出した段階で、もう今の姿がボンヤリ見えていたんじゃないかとすら思えてくる。
その辺のセンスというか、やっぱり凄いバンドだなと。
Sticky Fingers - Yours To Keep
2019年2月8日リリース。オーストラリアで国民的人気を誇るロックバンド、Sticky Fingersの4作目。
レゲエを下地にしつつヒップホップ、サイケデリックを取り入れたアイリーなサウンドでデビューした彼等。本作はDylan Frost(Vo.)の療養の為の活動休止を経た後初のアルバムになるとか。
1曲目「Sleep Alone」から分かる通り、サイケ色は一切無くなり、温かみと哀愁を全般に漂わせたオーガニックなサウンドを志向している。広々とした草原や、深い森の中などを想像させる音像、そして生命賛歌のように響くディランの歌。スティフィらしくないっちゃらしくないのかもだけど、大人の階段を一歩登ったかのような姿に感動する1枚。
正直、ワールドワイドな説得力を持ったアルバムじゃないけど、ローカルに特化した温かさや、シンプルながらも手の込んだアレンジやサウンドが染み渡る。
今年一番リピートしたアルバムかも。
While She Sleeps - So What?
2019年3月1日リリース、先程書いたBring Me The Horizonと同じ英国シェフィールド出身のメタルコアバンド、While She Sleepsの4作目。
前作『You Are We』(2017)が傑作だったのと、1月には待望の来日を果たしたりと個人的にも期待していた1枚。
作品を追う毎にクリーンパートのメロディアスさが増してきてた彼等だけど、今作ではメロディアスさはそのままに、より初期衝動全開のハードかつシャープなメタルコアサウンドを前面に押し出している。
スクリーム担当のLozも、部分的ではあるけどクリーンを歌っているけど、激しいパートではよりハイピッチなスクリームを聴かせてくれる。
今時こういう気持ち良さを感じさせてくれるメタルコアも少ないよなぁ。
Suchmos - The ANYMAL
2019年3月27日リリース。
今日の日本のシティポップブームの火付け役とも言えるバンド、Suchmosの3枚目。ちなみに自主レーベル立ち上げ後1発目のフルアルバムとな。
とは言え本作、「Stay Tune」などのアーバンなシティポップを鳴らしていた頃の彼等とは別物の、60年代後半以降のサイケデリック・ブルースロックを彷彿とさせるサウンドに。
その空気感は60年代後半のあの時のバンド達が持っていたそれのまま。でも単なる模倣に終わらず、ちゃんとルーツを理解した上で昇華している感じ。
1曲1曲が長いし抑揚も少ないので、しっかり聴き込もうとすると眠くなってしまうけど、全身の力を抜いて、ちょっとお酒も飲みつつテキトーに流し聴きすると良い感じにフワフワ出来る。もうちょっと聴き込んで隅々まで理解したいけど、きっとそういう聴き方は向かないアルバム。サイケってそういうもん。
Billie Eilish - When We All Fall Asleep, Where Do We Go?
2019年3月29日リリース。
"2019年の顔"とも言える人、ビリー・アイリッシュの1stアルバム。
いやー話題になったねコレ。各メディアや様々な大御所アーティストからの絶賛を受けてる彼女。正直「ハイプじゃね?」と一瞬思ったりもしたけど、内容的には絶賛の嵐も納得の1枚。
最新型EDM・トラップサウンドをベースにしたダークかつチルい世界観のトラックに、露骨に眠そうなボーカルを乗せるという、までありそうで無かった形。更に"ルーツが見えにくい"そのスタイルがミステリアスさを生み出している。ただし聴くとその日1日分のやる気を根こそぎ持って行かれるので注意してされたし。
怖いのは、このアルバムのトラックはほぼ全て宅録で作られてるらしいって事。それで天下が取れちゃう時代。恐ろしいわぁ。
まだ読んでないけど、ロッキングオンの2019年アルバムランキング、多分1位。笑
…なんかコレだけすごく雑に書いちゃったな。
Perry Farrell - Kind Heaven
2019年6月7日リリース。
Jane's Addictionのボーカリストにしてロラパルーザの創設者、90年代オルタナの大ボス、ペリー・ファレルの2枚目のソロ。
最初リリースされてたの知らなくて、知った時はめっちゃ驚いた。まさか聴けると思ってなかったし。
その音は何とも形容しがたいんだけど、聴けば分かる、どこもかしこもペリー・ファレル節全開。もう御年60歳、もう若き日のハイトーンもさすがに出ないけど、その歌声の持つ不思議な魔力は健在。そして作り出されるサウンドから滲み出る、何とも言えない"大人気なさ"。
これこそが彼の真骨頂なんだと思う。「いくつになってもやりたい事遠慮なくやっちゃいます!」みたいな。さすが90年代の大ボス。脱帽。
サカナクション - 834.194
2019年6月19日リリース。
サカナクションの7作目のアルバム。
なんと前作から6年ぶりのアルバムなんだそう。その6年間の間のバンドの音楽的変遷を網羅しつつの現在の姿を記録した2枚組。
「新宝島」に代表されるポップなDisc1、新曲「ナイロンの糸」に表れるシューゲイザー的ダークなカラーで統一したDisc2という内容。山口一郎氏(Vo.Gt)のインタビューを読んでみても、「これが新しいサカナクションです!」みたいな感じではなく、「とりあえず色々やった結果こんな感じに今のところ行き着いてます」みたいな暫定座標的な作品なんだろうな、と。
シンセの音もギターの音も、メロディラインもどこか昭和っぽくて、新しいのに懐かしい、レトロフューチャーな楽曲が多く揃っているけど、どの曲も"音の隙間"の活かし方が上手いなあという印象。所謂流行りのシティポップっぽい曲もあるけど、「ちょっと茶化してる?」みたいなアイロニーを感じてしまうのは気のせいだろうか。
Feeder - Tallulah
2019年8月9日リリース。
日本人ベーシストTaka Hirose擁する、英国の国民的ロックバンドFeederの10作目。
リリース自体も、その内容も、その後のジャパンツアーも含む全てが「待ってました!」な1枚。
最初から最後まで、全てがFeederらしい。前作『All Bright Electric』(2016)が、Grant Nicholas (Vo.)のソロ活動の影響が色濃く出た老生し切ったサウンドだったのに対し、今作はまるで若返ったようなフレッシュな作風に。実験的だった前作も面白かったけど、やっぱりこういう音が聴きたいな、という願望を見事に叶えて頂きました。
結果的にやってる事は王道Feeder路線なので、変わり映えっていう点ではしないけど、「だがそれが良い」って心から言える作品。
渋谷Quattroでのライブは最高でした。一生ついて行きます、Feeder。
Robbie Robertson - Sinematic
2019年9月20日リリース。
かつてはボブ・ディランのバックバンドとして活躍し、ディランから独立後、アメリカのロック史に大きな足跡を残した伝説のバンド、The Bandの元ギタリスト、ロビー・ロバートソンの6作目。
リリース日に偶然タワレコにて展開されているのを発見、父がThe Bandの大ファンなのもあって(勿論僕も好き)、ちょっと聴いてみるかと完全予備知識ナシで聴いてみたらとても良かった1枚。こういう時にサブスクって超便利。
The Band時代から脈絡と続く、太く柔らかい、オーガニックなロックサウンドと、湿っぽいジメジメした暗い空気感。物語性のある難解かつ殺伐とした歌詞。曲だけでなくコンセプトも掘り下げ甲斐のありそうな奥深い作品。
Robert Glasper - Fuck Yo Feelings
2019年10月3日リリース。
モダンジャズ界の若き巨匠(41歳。言うてそんな若くないけど笑)、ロバート・グラスパーの新作。この人はRobert Glasper Experimentとしてもアルバムを出してるので、通算何枚目ってのが正直数えづらい。笑
純粋な新作としては2016年、Experiment名義での『ArtScience』以来という事になるのか。
それまで、どんなアプローチでも基本的には高品質なポップスになるような作品を作り続けたロバート・グラスパーだけど、本作はメロディらしいメロディは皆無、とにかくリズムへの徹底的な追求のみに拘ったような内容。随所に飛び出す「Fuck」という言葉が意味するものとは。
まだちゃんと聴き込めていないけど、今年聴いた中では飛び抜けて実験的な1枚。しっかり理解するには、まだまだ時間がかかりそう。
Dylan Frost - Lush Linguistic
2019年12月6日リリース。
先に触れたSticky Fingers のボーカリスト、ディラン・フロストのソロ作。
割と唐突にリリースされて驚いた記憶がある。てかいつの間に作ったのコレ、みたいな。
8曲入りEP、ってのが公式の扱いらしいけど、トータル収録時間は40分しっかり超えてるので事実上フルアルバム。
内容的には2nd〜3rd期のスティフィに近いけど、より都会的な音像というか洗練されてる印象。
サイケなはずなのに色彩感がやや乏しい感じが、夜に都会の街並みを歩きながら聴くのにとても良い。
ちなみにApple Musicだと全曲にEマークが付いてるのがディランらしい。歌詞ちゃんと読んでみたい。
もうちょっと聴き込んでからちゃんとディスクレビューしてみたい1枚。
The Who - WHO
2019年12月6日リリース。
まさか本当に聴けると思わなかった、The Whoの新譜。ある意味今年一番のサプライズリリース。
前作『Endless Wire』(2006)をよりシンプルに、ブラッシュアップした感じで、音楽性的には王道フー路線から大きな変化はないけど、随所に昨年出たロジャー・ダルトリー(Vo.)のソロ『As Long As I Have You』(2018)との連続性を感じさせる部分もあったり。
ほぼ正式メンバーなピノ・パラディーノ(Ba.)とザック・スターキー(Dr.)が、今回は全面参加してるのが嬉しい。ピノの太いベース、キース・ムーンを彷彿させるザックのドラム、絶妙な浮遊感を醸し出すピートのコーラスワーク、ロジャーのソウルフルな歌…と、今のThe Whoに自分が求める全てが聴けて大満足。
Bring Me The Horizon - Music To Listen To~Dance To~Blaze To~Pray To~Feed To~Sleep To~Talk To~Grind To~Trip To~Breathe To~Help To~Hurt To~Scroll To~Roll To~Love To~Hate To~Learn Too~Plot To~Play To~Be To~Feel To~Breed To~Sweat To~Dream To~Hide To~Live To~Die To~Go To
2019年12月27日リリース。
Bring Me The Horizonが突如リリースした謎のアルバム。
いやこのアルバムは本当に謎。まずメンバーの演奏がオリバーの声以外恐らく出てこない。多分参加すらしてない。あとタイトル長い。
Todd Rundgrenの迷作『Initiation』(1975)のB面を彷彿させる。全体的に映画の挿入歌みたいな曲ばかり入ってるんだけど、構成音の一部が既に発表した曲のメロディや、同期のシンセパートとかから引っ張ってきたりとかしてるので、「この曲のコレってあの曲のアレじゃない?」みたいな聴き方したら楽しそう。結構集中力使いそうだけど。
しかし、一体どういう意図でリリースしたんだろう?
…良いお年を。